
もう少し産後鬱のこと、書かせて下さいね。
いやぁ、あの頃ウツになって何が一番つらかったかって、
自分の体が思うように働かなかったこと。
ウツって言うと精神的なものがイメージ的に先行してますけど、
気持ちの問題に加えて、体にもはっきり不調が出るんですよね。
常に体が痛い。だるい。重い。家事をしていても、
1時間そこら台所に立っただけで何だかくらくらしてしまう。
目が疲れやすく、チカチカして、買い物に出るとめまいがする。
もともと体力もスタミナもない私でしたけど、
それにしても妊娠前ならこのくらいの動作は楽勝のはず。
普通に赤ちゃんのお世話と家事をしているだけなのに、
その当たり前の生活をするのもついていけない程疲れていました。
オムツ替えして、授乳して、お腹いっぱいになると腸が刺激され
うんちが出て、そのオムツをまた替えて…永遠のループ。
ええ、ええ。その間も黙ってちゃあくれませんよ。
赤ちゃんとは思えないものすごい脚力でオムツを蹴り飛ばす。
耳に痛いほど響く大音量のお声。
まさにいつ終着駅に着くのか分からないジェットコースターに
乗せられ、振り回される一日がスタートする朝。憂鬱でした。
それがよりによってなぜこんな産後の、体力どん底の時に?
私にもう少し体力があったら、ハゼさんともっと楽しく過ごせるのに。
実は私、以前に パニック症候群 気味だったことがあります。
電車に長時間乗るとか、美容室でカット台に座らされてる時とか、
そこからは物理的に、または社会的な意味で逃げ出せない場合、
どういうわけか不安に襲われて、一刻も早く逃げ出したくなるんです。
私の場合は美容室と、あと人と話してる時に「あ、今話中断したら変だよな、
気悪くするよな」って思うと急に動悸がしてきて倒れそうな気がしました。
知らない人には「気持ちの持ちよう」とか思われがちなんですけど、
病気の原因的には、多くは脳の神経伝達物質不足なんだそうです。
結局私はいろいろなことを試し、最終的には妊娠前から続けてたヨガと、
そこで体験した断食でかなりすっきりと改善されたんですけど、
産後鬱を機に、どうもまたそれが復活したらしいのでした。
そうなるといけません。
外出すれば気が紛れるのは分かってる。
でも、出先で自分の体調が悪くなったらどうしよう。
ハゼさんを守れるのは自分しかいないというのに。
だったら家にいれば安全かというと、
こもればこもるほど一人不安に押しつぶされそうになる。
しかも。
悪いことにハゼさんと自分しかいない我が家の中で、
突然ふっとそのパニック症候群らしき不安が襲ってくるのでした。
授乳中、もうすぐハゼさんが寝そう…という時に、
またしてもやってくる動悸。下痢のようにお腹が痛いことも。
この誰もいない部屋の中で、私が今もし倒れて意識を失ったら、
この子はダンナくんが帰ってくるまでどうしているんだろうか。
今倒れたとしたら、まだ10時間も先じゃない。
泣き続けて脱水症状になったりしないかしら。
そもそもこんなに泣いてて息が止まったりしないよね?
…まあ、正気になって考えてみれば、あまりにも
アホくさい不安が次々と襲ってくるのでした。
家からは出られない。家にいても閉塞感がある。
ダンナくんの帰りを、1時間、あと1時間とカウントダウン。
5分でも遅かったりすると今度はダンナくんに八つ当たり。
ごめんね。でも、私もどうしていいか分からなかった。
そんな日をずるずると過ごしていたある日、母と電話で話していて
「家に一人なんかじゃないよ。ハゼちゃんがいるでしょう」
みたいなことを言われました。一人じゃないよ。二人でしょ。
母なりに励ましてくれたんだと思います。
でもその時の私にとって、そういう考え方はまだ出来ませんでした。
ちゃんと言葉が通じる大人がそばにいてくれてこそ、二人。
私の話を聞いてもらいたい。具合の悪い時、助けてもらいたい。
そんな気持ちから、つい電話口で泣きながら母に怒鳴ってしまいました。
「二人なんかじゃないよ!いつも一人なんだよ!私は」
その時そばにいたハゼさん、6ヶ月。
なぜか私の言葉が分かるかのように、とても悲しそうな目で
私を見ていたのが今でも忘れられません。
どういうわけか、なぐさめるように「くぅ〜」と声を出し、
私のことをじっと深いまなざしで見つめていました。
電話を切った私は、ハゼさんを抱きしめてひとしきり泣き続けました。
ごめんね。一人じゃないのかもしれない。
うん、そうかも。一人じゃないのかも。
そんなことがあった2月の終わり。
その後まもなく、気候も暖かくなってきて、
いたちむらの産後鬱も少しずつゆっくりと好転し始めていたのでした。
つづき「産後鬱のトンネルを抜けるまで〜その1」を読む!








